目次

  1. 絶縁抵抗とは何か
  2. なぜ絶縁抵抗測定が必要?
  3. 絶縁抵抗計の仕組み(原理)
  4. 絶縁抵抗計の種類
  5. 絶縁抵抗値の基準
  6. 絶縁抵抗の測定場所
  7. 絶縁抵抗計JIS規格について
  8. 絶縁抵抗計の構成
  9. 絶縁抵抗計の測定手順
  10. 共立電気計器の絶縁抵抗計の様々な機能
  11. 絶縁抵抗計セレクションガイド

1.絶縁抵抗とは何か

電気抵抗とは、電流の流れを妨げるもので電流の流れにくさをあらわしたものです。つまり、抵抗値が大きければ大きいほど電流が流れにくくなると言えます。
電気設備には電路・電線のように電流を流したいところと、感電や漏電が無いように電流を流したくないところがあります。このうち電流を流したいところには抵抗率の小さい導体が使われます。(下図参照)
例えば、導体の1つである銅の抵抗率は0.0000000168=1.68×10-8Ω・mです。
一方、電流を流したくないところには抵抗率の高い絶縁体が使われます。
例えばゴムの抵抗率は10,000,000,000,000=1013 Ω・mです。
絶縁抵抗の値は導体の抵抗よりもはるかに大きいので、単位は1Ωの100万倍であるMΩ(メグオーム)が使用されます。

2.なぜ絶縁抵抗測定が必要?

電気は必要な場所だけで使われるようにしなければなりません。
他の場所へ漏れ出して(漏電)しまうと火災が発生したり感電する恐れがあり、大変危険です。そのため、必要な場所以外には電気が流れないよう、絶縁物で覆うなどして導体から絶縁しています。(例えば電線の被覆など)


この絶縁物は永遠に安全ではなく、年々劣化します。劣化の原因には、温度や湿気、汚れ、化学反応、損傷などがあり、劣化が進むと絶縁破壊が起こってしまい電気が外に漏れ出して大変危険です。
この絶縁破壊を未然に防ぐため、定期的に絶縁抵抗値を測定し安全かどうか?異常な変化がないか?(傾向管理)を確認しています。その絶縁抵抗値を測定するのが絶縁抵抗計です。

3.絶縁抵抗計の仕組み(原理)

絶縁抵抗計は内部で定格電圧(高電圧)を発生させ、測定物に電圧を印加します。オームの法則により、そこに流れる電流を測定することで抵抗値を求めています。
アナログ式の絶縁抵抗計は、この電流によって振れる指針を絶縁抵抗値の目盛に置き換えて表示しています。
絶縁抵抗計の基本構造は、直流電源と電流計、電流保護素子及び測定開始/終了のスイッチで成り立っています。
LINE端子(L端子、ライン端子)と、EARTH端子(E端子、アース端子)との間に被測定物をつなげて測定します。

アース端子は直流電源の+(正極)に、ライン端子は-(負極)につながっているため、測定電流はアース端子から被測定物を通り、ライン端子へ流れます。測定の際にはアース測定コードを接地端子(大地)側に接続します。
従来より、大地に対する絶縁測定や被測定物の一端が接地されているときには、大地側に+極を接続する方が抵抗値が小さく出る(すなわち、絶縁測定としてはきびしい方向の試験となる)のが普通であり、絶縁不良の検知には最適であるとされています。

対数目盛
アナログ式絶縁抵抗計の目盛は対数表示になっています。これは、1000倍もの広い範囲の絶縁抵抗値の測定を行うためで、例えば指針が目盛の0.1~1~10~100のどの位置にあっても、同じ細かさで測定値を読み取ることができるからです。

絶縁抵抗計の有効測定範囲
測定範囲のうち精度が保証される範囲を有効測定範囲といい、第1有効測定範囲と第2有効測定範囲の区別があります。
第1有効測定範囲…有効最大目盛値の1/1000の目盛値から、 1/2に近い1、2、5又は
         それらの10の整数乗倍の抵抗値まで。
第2有効測定範囲… 第1有効測定範囲を超え、有効最大表示値及びゼロに近い表示値まで
 例:絶縁抵抗計(500V/100MΩ)の場合
   第1有効測定範囲 0.1~50MΩ(表示値の±5%)
   第2有効測定範囲 0.05~0.1、50~100MΩ(表示値の±10%)

4.絶縁抵抗計の種類

絶縁抵抗計には用途に合せて定格測定電圧の異なる数多くの種類があります。
特にその定格測定電圧により、低圧用(1000Vまで)と高圧用(1000Vを超えるもの)に大きく分けられ、それぞれ測定対象及び目的に応じて使い分けます。
また、アナログ式とデジタル式や単レンジと複数レンジのもの、さらに接地抵抗計などと一緒になった複合測定器など様々な種類の絶縁抵抗計があります。

絶縁抵抗計の主な使用例(JIS C 1302:2018絶縁抵抗計解説より)

定格測定電圧 使用例 種別
25V/50V  電話回線用機器、電話回線電路などの絶縁測定 絶縁抵抗計
100V/125V

100V系の低電圧配電路及び機器の維持・管理 絶縁抵抗計
制御機器の絶縁測定 絶縁抵抗計
250V  200V系の低圧電路及び機器の維持・管理 絶縁抵抗計
500V



600V以下の低電圧配電路及び機器の維持・管理 絶縁抵抗計
600V以下の低電圧配電路のしゅん(竣)工時の検査 絶縁抵抗計
発電中の太陽電池アレイの絶縁測定(P-N端子間を短絡する方法) 絶縁抵抗計
発電中の太陽電池アレイの絶縁測定(P-N端子間を短絡しない方法) PV絶縁抵抗計
1000V 600Vを超える回路及び機器の絶縁測定 絶縁抵抗計
常時使用電圧の高い高電圧設備(例えば、高圧ケーブル、高電圧機器、高電圧を用いる通信機器及び電路)の絶縁測定 絶縁抵抗計
発電中の太陽電池アレイの絶縁測定
(P-N端子間を短絡する方法)
絶縁抵抗計
発電中の太陽電池アレイの絶縁測定
(P-N端子間を短絡しない方法)
PV絶縁抵抗計

5.絶縁抵抗値の基準

低圧電路における絶縁抵抗値は、電気設備に関する技術基準を定める経済産業省令「第3章:電気使用場所の施設」の第58条にて規定されています。

電路の使用電圧区分 絶縁抵抗値
300V以下

対地電圧(接地式電路においては電線と大地との間の電圧、非接地式電路においては電線間の電圧をいう。以下同じ。)が

150V以下の場合

0.1MΩ
その他の場合 0.2MΩ
300Vを超えるもの 0.4MΩ

(電気設備技術基準より)

6.絶縁抵抗の測定場所

電気使用場所における使用電圧が低圧の電路の①電線相互間及び②電路と大地との間の絶縁抵抗は、開閉器または過電圧遮断機で区切ることのできる電路ごとに測定を実施しなければなりません。

①充電部と充電部間(線間)
 アース端子(E)とライン端子(L)の接続の区別は必要有りません。
 

②充電部と非充電部間(大地間)
 接地端子にアース端子(E)を接続し、充電部にライン端子(L)を接続して測定します。
 

屋内配線の絶縁抵抗測定の具体例

線間の絶縁抵抗測定は、短絡事故の危険度を確認するために行います。
但し、通常は表示灯や小型変圧器(蛍光灯点灯用)等が接続されているため、多くは竣工時のみ測定しています。


対地間の絶縁抵抗測定は、通常漏電や感電の危険度を確認するために行います。

7.絶縁抵抗計JIS規格について

2018年に絶縁抵抗計JIS規格(JIS C 1302︰2014)は、JIS C 1302︰2018に改正されました。
この改正では、PV絶縁抵抗計が種別として追加され、また、国際整合性の向上が図られました。
主な改正点は、次のとおりです。

a) 国際整合性を向上するため、対応国際規格にない旧規格の外部磁界の影響、測定スイッチ、及びテストリードの要求事項を削除しました。
b) 旧規格では、用語として“固有誤差”を使用していたが、今回の改正では、“不確かさ”の導入を踏まえて“許容差”に変更しました。また、今回の改正で近年増加してきている太陽電池アレイの絶縁測定を含めるため、太陽電池アレイを用語として定義しました。
c) 旧規格で“交流分の影響”としていた項目は、対応国際規格の要求事項に整合させ、“出力電圧”に項目名を変更しました。
d) PV絶縁抵抗計を種別として追加したため、固有の要求事項として直流電圧重畳時の影響を規定し、種別の識別機能を要求として追加しました。
e) PV絶縁抵抗計の定格測定電圧の指定は、太陽電池アレイの定格電圧が600Vを超える場合も想定されるため、各製造業者の操作説明書の記述を参考にすることとしました。
f) PV絶縁抵抗計においては、安全を確保するために制限抵抗を搭載しており、要求事項の1mAに整合させることができません。そのため、定格電流を製造業者が個別に定めることを要求事項としました。
g) “過負荷保護”としていた項目名が分かりにくいため、“過電圧保護”に変更しました。
h) 旧規格では、単位又は量の記号をMΩ及び∞と定めていたが、対応国際規格に整合させて削除しました。
また、製品に対する表示では、今回追加したPV絶縁抵抗計において、一般的な絶縁抵抗計で測定する対象の電路、機器において使用できないこともあり、絶縁抵抗計の種別(使用区分)として、名称に“PV絶縁抵抗計”を追加しました。

8.絶縁抵抗計の構成

絶縁抵抗測定は、①絶縁抵抗計と②測定コード(ライン用とアース用の2本)が基本構成です。アース測定コード側は、③ワニグチクリップタイプを使用すると、測定コードを持つ必要がないため便利です。また、リモートスイッチ付測定コードを使用すると、手元で測定開始/終了の操作ができるので、より安全かつ簡単に測定ができるようになります。

9.絶縁抵抗計の測定手順

  1. 被測定物に印加しても良い適切な定格測定電圧を確認します。
  2. アナログ式絶縁抵抗計の場合、メータゼロ調整を行います。本体の電源を切り、メータゼロ調整器をドライバーで回し、指針を∞目盛に正しく合わせます。
  3. 電池電圧を確認します。電池残量が無くなっていたり少なくなっている場合には、全て新しい電池に交換します。
  4. 測定コードのコネクタを本体の接続端子へ確実に差し込みます。
  5. 適切な定格測定電圧に切換えます。
  6. 本体の動作確認のため、ライン測定コードとアース測定コードの先端をお互いショート(短絡)させた状態で測定スイッチを押し、測定値がほぼ0MΩとなることを確認します。また、測定コードをオープン(開放)状態で測定スイッチを押し、アナログ式なら“∞”、デジタル式ならオーバー表示になることを確認します。(※この時、測定コードの先端間に高電圧が発生しています。触れると感電しますので充分注意してください。)
  7. 被測定物の回路の停電をチェックし、電圧がかかっていないことを確認してください。
  8. 測定スイッチを押さないで、アース測定コード(黒)を被測定回路の接地端子に接続し、ライン測定コード(赤)を測定対象に当てます。(接地されていない場合、ライン・アースの接続の区別は必要ありません。)
  9. 測定スイッチを押します。測定結果(表示部の指示値)を読みます。(アナログ式の場合、選択レンジに合った絶縁抵抗目盛にて指示値を読みます。)
  10. 測定終了後は測定コードの接続はそのままの状態で測定スイッチを切り、被測定物に充電された電荷を放電してください。(オートディスチャージ機能)
  11. 放電を確認後、測定コードを被測定物から外し、絶縁抵抗の測定を終了します。

10.共立電気計器の絶縁抵抗計の様々な機能

  • Bluetooth通信機能
    無線通信機能によりスマートフォンやタブレット端末にて測定値のモニタリング・保存が可能です。
  • リモートスイッチ機能
    ライン測定コードに測定スイッチが付いていることにより、手元操作で測定のON/OFFが可能です。
  • メモリー機能
    絶縁抵抗計本体に測定データを記録することができる機能です。
  • コンパレータ機能
    測定値が設定値を超える(下回る)とアラームでお知らせする機能です。
  • PI/DAR表示機能
    絶縁体の漏れ電流の時間的増加の有無を調べる試験です。
    PI(10分後の測定値/1分後の測定値)、DAR(1分後の測定値/15秒後の測定値)
    主にケーブルの絶縁診断を行う場合に活用されます。

11.絶縁抵抗計セレクションガイド

レンジ構成 モデル名 定格測定電圧 JIS
15V 25V 50V 100V 125V 250V 500V 1000V
制御
回路
制御回路
火災報知器
100V回路 200V
回路
竣工
試験
高圧
回路
アナログ
1レンジ 3411
3412
2レンジ

3144A
3145A
3146A
3147A
3148A
3161A
3レンジ 3431
3432
4レンジ

3441
3441BT
3442
デジタル
6レンジ 3551
3552
3552BT