目次

  1. はじめに
  2. クランプメータとは何か?
  3. クランプメータの測定原理と種類
    (1) CT(Current Transformer-変流器)方式
    (2) ロゴスキーコイル方式
    (3) ホール素子方式
    (4) フラックスゲート方式
  4. クランプメータによる電流の測定方法・クランプ可能な測定導体径
    (1) クランプメータによる電流の測定方式
    (2) クランプ導体径早見表
  5. クランプメータの機能と使用方法
    (1) 平均値タイプ/ 真の実効値タイプの違い
    (2) 突入電流(インラッシュカレント)測定について
    (3) 不平衡電流測定について
    (4) 漏れ電流測定について
    (5) 計装電流(4-20mA)測定について
  6. クランプメータセレクションガイド

1.はじめに

私たちは多くの電気製品に囲まれていて、電気は私たちの生活に必要不可欠なものですが、普段生活していて目に見えるものではありません。この電気を見える化するものさしが電気計測器であり、本書で説明するクランプメータは電流のものさしです。
「ブレーカがトリップした際にどの電気製品の電流が一番大きいか調べたい」、「洗濯機が水漏れしているので漏電の危険性がないか確認したい」、「電気料金を下げるためにIH調理器の消費電流がどれくらいあるのか測りたい」こんなときにクランプメータは力を発揮します。

2.クランプメータとは何か?

クランプメータは、電線をクランプする(はさみ込む)ことにより、運転中の電気設備や機械を停止させることなく通電状態のままで電流を早く簡単に測定することができる大変便利な測定器です。
近年の電気設備の多様化、複雑化に伴い、電流値を通電状態で測定できるクランプメータは、設備の点検やメンテナンスにとって今や必要不可欠の測定器といっても過言ではありません。一般のマルチテスタ(回路計)の場合、いったん電源を落とし回路を切断して電流測定をしますが、クランプメータは電線を被覆の上からクランプするだけで電流を測定できます。操作が簡単な上、回路に直接接続しないので、安全に大電流を測定することができます。



クランプメータは電流の測定だけでなく、測定コードを取り付けて、電圧、抵抗等を測定できる製品もあります。
また、AC(交流)電流測定用、DC(直流)電流測定用、交流・直流共用、漏れ電流など微少な電流が測定できるもの、更には、電力測定ができるもの、波形観測ができるものなど、様々なタイプのクランプメータがあります。

代表的なデジタルクランプメータの外観を示します。本体は開閉式の電流センサ部、ファンクションスイッチ部、表示部、電圧・抵抗入力端子部から構成されており、電流センサ部を除いては一般のマルチテスタとほとんど変わりはありません。この電流センサ部は先端が開閉できるような構造になっており、トリガという開閉装置を押すことにより、先端が開き配線をはさみ込むことができます。また、電流センサの先端が開いている形状のクランプメータ(オープンタイプ)もあります。このタイプのクランプメータはトリガで電流センサを開く動作は必要なく、電流センサ部の奥に電線を入れることで測定ができるため、配線が込み入った場所などでの測定に便利です。

3.クランプメータの測定原理と種類

電流検出の基本的な原理としては、電流が流れることにより発生する磁界を電流センサで検出し、測定電流に比例した出力を取り出します。この電流検出の方法にはいろいろありますが、次の4種類の方式が一般的です。

測定方式 特長 測定対象
1 CT方式 もっとも一般的、コストも安い ACのみ
2 ロゴスキーコイル方式 コアレスなので、磁気飽和がなく、大電流測定に適している ACのみ
3 ホール素子方式 ホール素子のホール効果を利用しているので、交流/直流両方の測定が可能 AC/DC
4 フラックスゲート方式 ホール素子方式と比較して、ゼロドリフト特性が非常に小さいので、高精度の直流電流測定が可能 DCのみ

(1) CT(Current Transformer-変流器)方式
クランプした測定導体に電流(1次電流)が流れると、電磁誘導作用によって磁気コア(CT)2次側コイルに1次電流に比例した電流が誘起します。次に、その磁気コア(CT)によって取り出された2次電流がシャント抵抗や電流電圧変換回路によって適正な電圧に変換され、その後整流回路やAD変換回路を経て表示部に送られ、測定電流値として表示されます。
(2) ロゴスキーコイル方式
交流電流の測定にあたり、磁界の検出に磁気コアを使用することなく電流を検出するセンサがロゴスキーコイルです。図5に示すように、一次導体周辺に空芯のコイルを設置すると、一次電流に対応した電圧がコイルの両端に誘起します。この電圧は一次電流の微分波形になっているため、積分器を通すことで一次側の電流波形を再現できます。
このコイルはドイツの電気工学者であるロゴスキー(Rogowski)氏によって考案されました。磁気飽和がないので、大電流の測定が可能で、雷電流の測定にもこの方式が活用されています。
(3) ホール素子方式
ホール素子とは、入力端子にバイアス電流を加えると出力端子にバイアス電流と磁界の積に比例した電圧を発生する素子です。
直流電流の検出には、電磁誘導が利用できないため電流センサとしてホール素子を使用します。図6のように磁気コアをカットしてギャップを設け、その間にホール素子を入れます。磁気コア内部には、電流に比例した磁束が流れるため、その磁束をホール素子で検出し、一次電流に比例した出力を取り出します。もちろん直流だけでなく交流電流の測定も可能です。
(4) フラックスゲート方式
フラックスゲート形磁界センサは、磁性薄片にコイルを巻き、高周波電流により飽和領域まで励磁すると、磁界に比例した偶数次高調波成分が出力されます。ホール素子方式と比較し、オフセットドリフトが非常に小さい特長があるため、数mAレベルのDC微少電流も測定可能です。

4.クランプメータによる電流の測定方法・クランプ可能な被測定導体径

(1) クランプメータによる電流の測定方法
 ①ファンクションスイッチを回して電流測定レンジにします。
 ②クランプメータの電池電圧を確認します。電池が切れている、又は残りが少ない場合には、全て新しい電池に
  交換します。
 ③指でトリガを押して電流センサをゆっくり開きます。
 ④測定したい配線1本を電流センサの中に入れ、トリガから指をゆっくりはなします。
 ⑤測定する電流に適したレンジを選択し切り換えます。
 ⑥表示部の電流値を読み取ります。



 クランプメータによる電流測定時のポイント

  • 直流電流測定を行う場合、必ずゼロ調整を行ってください。(オートで行う製品もあります)
  • 電池交換時は電池の向きに注意してください。
  • 図8中央図の電源コードのような二芯コードの場合、コードを分割して1本だけをクランプするか、図8右図のようなラインセパレータを使用して測定してください。
  • 電流センサがしっかり噛み合うことを確認してください。噛み合わせが不完全だと、大きな誤差を生じる可能性があります。
  • 電流レンジは測定電流の大きさに合わせて大きい測定レンジから小さい測定レンジに切り換えてください。
  • 測定導体ができるだけ電流センサの中心になるように測定してください。中心に近いほど精度の良い測定することができます。また、オープンコアタイプの場合では被測定導体が電流センサの矢印より内側にくるようにしてください。

(2) クランプ導体径早見表
下表はクランプメータで測定可能な導体径(電線の太さ)をケーブルの種類別に表にしたものです。

クランプ導体径 早見表

クランプメータの
測定導体径

IV
600V

SV(VVR)
600V3心
CV
600V3単心
CV
600V3心
CVT
600V
φ6mm 8sq 以下 - - - -
φ10mm 22sq 以下 - 14sq 以下 - -
φ12mm 38sq 以下 2sq 以下 22sq 以下 2sq 以下 -
φ24mm 200sq 以下 22sq 以下 150sq 以下 22sq 以下 22sq 以下
φ33mm 400sq 以下 38sq 以下 325sq 以下 60sq 以下 60sq 以下
φ40mm 500sq 以下 60sq 以下 500sq 以下 60sq 以下 60sq 以下
φ55mm 500sq 以下 150sq 以下 1000sq 以下 150sq 以下 200sq 以下
φ68mm 500sq 以下 250sq 以下 1000sq 以下 250sq 以下 325sq 以下

※sq :mm²

5.クランプメータの機能と使用方法 

(1) 平均値タイプ/真の実効値タイプの違い
実効値とは交流の大きさを、直流を流した場合の仕事の大きさで表わしたもので、 力や熱などのエネルギーにも直結した値です。基本的に交流の電圧・電流の大きさはこの実効値で表します。
交流電圧・電流測定器には平均値タイプ(平均値検波実効値表示)と真の実効値タイプ(RMS)の2タイプあります。平均値タイプは交流の半周期間の瞬時値の平均値を検出しており、この値が正弦波の実効値になるように波形率を乗じて指示しています。波形率とは平均値を実効値に換算する際に使用する値で波形率=実効値÷平均値で求められ、正弦波の場合、波形率は1.111…になります。(図10)
ただし、歪み波形や正弦波以外の波形では当然波形率が変わるので平均値タイプでは指示値に誤差が生じます。

これに対し、真の実効値タイプ(RMS)は、瞬時瞬時の交流波形の波高値から実効値に内部演算しているので、歪んだ波形でも正確な測定ができます。※RMS(二乗演算回路=Root Mean Square) このため、歪みのない商用電源周波数(50/60Hz)では平均値タイプ、実効値タイプ(RMS)共に同じ値を示しますが、歪んだ波形(サイリスタ及びインバータ制御等の省エネルギー設備により高調波成分を含み歪んだ電流波形)の測定をした場合、平均値タイプは波形率が異なり、測定値に誤差が生じます。
このため、例えばサイリスタ制御の歪み波形の電流を測定した場合、平均値タイプでは実際流れている電流値より低く表示される可能性があり、その場合電線ケーブルが熱をもち火災発生等の事故につながる可能性も懸念されます。
図11ではサイリスタ制御のモーター負荷を測定したものです。真の実効値タイプのクランプメータが7.9Aを指示しているのに対し、平均値タイプは5.6Aを指示しています。


(2) 突入電流(インラッシュカレント)測定について
モーター等の電気機器の電源を入れた際に、定常時よりもはるかに大きい電流が瞬間的に流れることがあり、この電流を突入電流(インラッシュカレント)といいます。
突入電流は定常時の電流の10倍を超えることもあり、場合によっては電源スイッチの溶着、ヒューズの溶断、整流器やその他の部品への過大なストレス、電源電圧の一時的な低下による他の機器への悪影響(照明の一時的な減光、コンピュータのクラッシュ、ブレーカのトリップ等)を及ぼす可能性もあります。
これらを未然に防ぐには突入電流が機器等の仕様範囲内に収まっているかなどの確認を行う必要があります。この突入電流を測定するには、非常に短い時間(約10ミリ秒)の電流変化を捉えることができるピークホールド機能付きのクランプメータで測定します。ピークホールド機能は電流波形の最も振幅が大きい電流値を保持する機能で、瞬間的に流れる高い電流値を確認することができます。

(3) 不平衡電流測定について


工場などで動力ラインなど負荷の増減、またかたよった設備機器の稼働により、特定相だけが負荷が重くなるなど各相のバランスが悪くなることがあります。これを不平衡といい電圧・電流波形の歪み、電圧降下や逆位相電圧を発生させ、これによりモーターの回転ムラやブレーカの誤作動、トランスの過負荷発熱などの事故につながるおそれがあります。
クランプメータを使用することで、不平衡が起きているか負荷のバランスを簡単に確認することができます。

(4) 漏れ電流測定について
漏れ電流(漏電)とは電源ケーブルの被覆の劣化や破壊、また、電気機器が水に濡れたりする事により絶縁不良が起き電気が使用箇所以外に流れ出してしまうことをいいます。
漏れ電流が発生すると火災発生の要因や、人が感電するおそれがありとても危険です。そのため、電気設備の保守メンテを行う業者さんなどは漏れ電流がないかどうか調べる絶縁監視を行っています。この絶縁監視は基本的には絶縁抵抗計で絶縁抵抗値を測定する必要がありますが、絶縁抵抗計は測定時に停電にする必要があるため、停電することができない工場設備やオフィス等では通電状態で漏れ電流を測定可能なリーククランプメータで絶縁監視を行っています。
リーククランプメータは高性能なCTを使用しておりパーマロイ(鉄とニッケルの合金)を使用しています。このCTの特長は透磁率が高く、微少な電流でも捉えることができます。また、シールドコアといって外部磁界の影響を受けにくいように設計されています。
漏れ電流の基準値については電気設備技術基準第14条で「使用電圧が低圧の電路であって、絶縁抵抗測定が困難な場合には、(中略)それぞれ漏えい電流を1mA以下に保つこと。」と定められており、低圧回路にて測定値が基準値
(1mA)以下であれば絶縁状態に問題はないという考えになります。

電路の使用電圧区分 絶縁抵抗値
300V以下 対地電圧(接地式電路においては電線と大地との間の電圧、非接地式電路においては電線間の電圧をいう。以下同じ。)が150V以下の場合 0.1MΩ
その他の場合 0.2MΩ
300Vを超えるもの 0.4MΩ

※ 電気設備に関する技術基準を定める省令第58条で定められた絶縁抵抗は、漏えい電流からすれば1mA以下と同等とみなすことができます。

⑷-1 漏れ電流の測定方法
リーククランプでの漏れ電流測定は零相電流とアース線(接地線)電流を測る2つの方法があります。

A.零相での漏れ電流測定方法
三相3線なら3線一括、単相2線なら2線一括でクランプします。(三相4線は4線一括、単相3線は3線一括)漏れ電流がない場合、電気機器へ向かっていった電流は一本の線を通って100%戻ってきます。したがって電源側から流れる電流でできた磁界と、負荷側から流れる電流でできた磁界の向きが互いに反対で大きさも同じであるため、互いに打ち消し合い、測定値はゼロになります。もし、漏れ電流があった場合、負荷側から流れる電流でできた磁界は、電源側から流れる電流でできた磁界よりも、漏れた電流の分だけ、少ない磁界が発生することになります。そのため、差し引き、漏れた電流の分だけの磁界を測定することができます。

B.アース線(接地線)での漏れ電流測定
電気機器にはアース線で接地しているものがあり、これらの機器に漏れ電流がある場合漏れ電流はアース線から大地に流れます。このアース線をリーククランプメータで直接クランプすることで漏れ電流が測定できます。また、高圧から低圧へ降圧するトランスの二次側の中性点は、必ずアース線で接地されています。したがって、このトランスから電力が供給されている機器の漏れ電流は、必ずこの中性点に帰ってくるので、中性点のアース線をリーククランプメータでクランプし、漏れ電流を測定することができます。ただし、この場合、漏れ電流が実際はゼロであっても、各相と大地との間の静電容量によって、アース線にごくわずか電流が流れている場合があり、漏れ電流があるのと勘違いすることがあるので注意が必要です。
また、接地工法により、零相電流とアース線の電流は必ずしも一致しない場合があります。


(4)-2 絶縁不良の発見方法
まず、分電盤の1次側で、零相の漏れ電流を測定します。
次に、分岐回路ごとに零相の漏れ電流を測定し、どの分岐回路に漏れ電流があるか探します。漏れ電流のある分岐回路が見つかったら、今度はそこから負荷側へと測定点を移動させます。もし漏電箇所を通り過ぎると漏れ電流がなくなるか極端に少なくなるので、それにより、どの測定点とどの測定点との間に絶縁不良が起こっているか知ることができます。

この方法であれば、電気を止めることなく絶縁不良箇所を発見できます。絶縁抵抗計を使用した絶縁不良箇所の発見方法の場合、必ず停電させ、必要な場合は各分岐回路の線をはずしたりして、各区間ごとに測定をしなければならないなどの手間がかかりますが、リーククランプメータを使用した漏れ電流測定ではそういった手間は必要ありません。また、定期的に漏れ電流を測定し記録しておき、点検するごとに漏れ電流の大きさをチェックするようにすれば、より早く、より確実に絶縁不良箇所が発見できます。

(4)-3 フィルタ(周波数切換)機能について
最近では省エネなどの目的で、インバータ制御をする商品が増えています。このような機器の高調波成分がリークしたり不完全なフィルタのコンデンサーを通してアースに流れたりすることがあります。この高調波ノイズの影響を除去し商用電源周波数
(50/60Hz)の基本波だけを測定するため、フィルタ(周波数切換)機能があります。フィルタ(周波数切換)機能はハイカットフィルタ回路で高調波成分をカットし商用電源周波数(50/60Hz)の基本波だけを測定し、漏電ブレーカのトリップした原因が高調波か、漏れ電流か判別することが可能です。また、高調波流入の疑いがある場合、ハイカットフィルタをオフにした広い周波数帯域での測定値とハイカットフィルタで高調波成分をカットした測定値を比較することで、高調波の有無を確認することができます。図17は絶縁状態が良好にもかかわらず、高調波の影響によってハイカットフィルタをオフにした状態で大きな指示となった例です。


(5) 計装電流(4-20mA)測定について
計装電流とはポンプやモーターなどのアナログ量(流量・温度・電力・重量・圧力等)を計測・制御装置に伝達する際に変換する電流信号をいいます。直流電流の4mAを最小値、20mAを最大値としてアナログ量を表しています。例えば、12mAの場合は最大値の半分(50%)のアナログ量になります。また断線や故障が起きた場合と信号0の状態を区別するため、0mA~4mA(ライブゼロ)の範囲を設けています。
計装電流を使用している設備例を図19に示します。この場合では、水量を4-20mAの電流値に変換しています。4-20mAの信号によりモーターポンプが流す水量を制御しています。

この計装電流がアナログ量に対して正しく発信されているかを確認するために計装電流を測定する必要があります。計装電流
(4-20mA)測定方法の一例として、測定回路に250Ωの抵抗を直列に挿入しマルチメータでその電圧を測定しオームの法則で計装電流を算出する方法があります。ただし、この方法では回路を切断して抵抗を接続する必要があるため、測定に手間がかかったり、長い信号線を測定した場合にノイズの影響を受けやすいなどの欠点があります。(図20)
4-20mA測定用のクランプメータではクランプするだけで計装電流を測定することがきるため、従来に比較して簡単に確認することが可能です。(図21)

6.クランプメータセレクションガイド