接地抵抗測定ガイド|お客様サポート|共立電気計器株式会社

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接地抵抗測定ガイド

目次
  1. 接地とは
  2. 接地(アース)がなぜ感電事故防止に役立つのか
  3. 接地抵抗
  4. 接地の目的
  5. 接地抵抗値の基準
  6. 接地抵抗の測定原理
  7. 接地抵抗計の構成
  8. 補助接地極の設置のポイント
  9. 接地の測定方法
    A.精密測定(三極法)の方法
    B.簡易測定(二極法)の方法
  10. クランプ式接地抵抗計の測定原理
  11. 接地抵抗計セレクションガイド

1.接地とは

地球すなわち大地は電気を流す導体です。しかもいくら電流を流しても、大地全体の電位は変わりません。そこで一般に大地の電位を0Vとし、電圧の基準として使っています。
その大地を利用して、漏電事故や感電事故を引き起こす危険な電流を大地に放出させる目的で行われるのが「接地(アース)」です。「接地(アース)」の基本的な仕組みは、地中に「接地極」と呼ばれる銅板などを埋設し、それと接地をとりたいもの(電気機器など)を緑色の「接地線」で接続した形になっています。
「接地極」には銅板や銅棒が使われますが、接地の規模によっては複数の接地極が並列に接続されたり、接地極がメッシュ状になっている場合もあります。


2.接地(アース)がなぜ感電事故防止に役立つのか

電気機器は感電保護のため、内部の充電部と外側の金属ケースの間は絶縁されています。しかし絶縁不良などで漏電が起こると、電気機器の金属ケースが帯電します。
これに気付かず人が金属ケースを触ると、電気が人体を経由して大地へと流れるため、人は感電してしまいます(人体は電気を流す導体であり約2000Ωの抵抗値を持っています)。
このとき金属ケースが接地(アース)されていれば、大地に向かってアースと人体の二つの電流経路ができます。ここでアースの抵抗値は100Ω以下と人体よりはるかに小さいので、漏電電流の大半はアースを通って大地に流れます(電流と抵抗は反比例の関係にあるため、電流は抵抗の小さいほうにたくさん流れます)。
その結果人体は危険がない程度の微小な感電で済むのです。
このアースの抵抗のことを「接地抵抗」と呼び、その抵抗値で接地の良否を判断します。接地抵抗値が小さいほど優れた接地と言えます。

3.接地抵抗

接地抵抗には次の3つの要素が含まれています。
 ①接地線・接地極自体の抵抗
 ②接地極と大地間の接触抵抗
 ③大地の抵抗
このうち、①は値が小さくほとんど無視できます。②は電極の材質・形状・埋設状態などで変わってきますが、通常は低く抑えられており、結局、接地抵抗の大部分は③の「大地の抵抗」で占められています。



大地の抵抗は土質や温度、含水率などで大きく変わってきます。
接地抵抗は小さい方が良いので、接地極は岩地や砂地を避け、なるべく水気のあるところに、なるべく深く埋設するようにします。
ここで深さは温度にも関係します。日本は四季があるため、地表近くでは接地抵抗も季節によって変化し、夏は低く冬は高くなります。特に寒冷地では地表近くの地面が凍ってしまうため、冬の接地抵抗が高くなります。そのため、冬でも凍らないような地中深くに接地極を配置することが大切です。

4.接地の目的

接地は2.で述べた感電防止以外にもさまざまな目的で使われます。例えば電柱にあるトランス(配電用の変圧器)は1次巻線(高圧側)と2次巻線(低圧側)の間が絶縁されていますが、この絶縁が劣化すると2次巻線を経て低圧側に高圧が発生し、低圧側に接続された電気製品が破損して感電や火災が発生する危険があります。これを防止するため、変圧器の2次巻線の一端は必ず接地されています(これを系統接地と言います。P2の図を参照)。この接地により絶縁劣化が起こっても高圧の電気は大地に流れ、低圧側は守られます。
また漏電遮断器はこの系統接地と、先にのべた電気機器の外側金属に施された接地(これを機器接地あるいは保安用接地と言います)のふたつを利用して作動する仕組みになっています。
そのほかにも、静電気防止用、避雷針用、雑音対策用などでも接地が使われています。

系統接地 高圧と低圧の混触による2次側電路の災害防止
機器接地 電気機器の絶縁不良による感電防止
雷害防止用接地 避雷針等雷電流を安全に大地に流すため
静電気障害防止用 静電気防止や静電気火花の引火防止のため
地絡電流検出用接地 漏電リレーや漏電遮断機が確実に動作するための十分な地絡電流の確保
電源変圧器2次側に施す接地
等電位化用接地 病院において施されるのが典型的
あらゆる金属部に危険な電圧が発生しないように相互に結合
雑音対策用 エレクトロニクス装置の接地
機能用接地 電算機等が正常に動作するため電位の安定な基準点を提供


5.接地抵抗値の基準 

電気設備技術基準」に接地工事の種類と接地抵抗が定められており、この値を維持する必要があります。

接地工事の種類接地抵抗値接地線の太さ電圧の種別による機器
A 種 10Ω以下 直径2.6㎜以上 高圧用又は特別高圧用の機械器具の鉄台及び金属製外箱
B 種 計算値
(注1)
直径4㎜以上 高圧又は特別高圧の電路と低圧電路とを結合する変圧器の低圧
側の中性点(中性点がない場合は低圧側の1端子)
C 種 10Ω以下
(注2)
直径1.6㎜以上 低圧用機械器具の鉄台及び金属製外箱(300Vを超えるもの)
D 種 100Ω以下
(注2)
直径1.6㎜以上 低圧用機械器具の鉄台及び金属製外箱(300V以下のもの。但し、直流電路及び150V以下の交流電路に設けるもので、乾燥した場所に設けるものを除く)

注1.変圧器の高圧側又は特別高圧側の電路の1線地絡電流アンペア数で150(変圧器の高圧側の電路と低圧側の電路
   との混触により、低圧電路の対地電路が150Vを超えた場合に、2秒以内に自動的に高圧電路を遮断する装置を設
   けるときは300)を除した値に等しいオーム数以下。
注2.低圧電路において、その電路に電流動作形で定格感度電流100mA以下、動作時間0.5秒以内の漏電遮断器を施設す
   るときは500Ω以下でよい。

6.接地抵抗の測定原理

接地抵抗の測定には一般に電位降下法が使われています。
接地抵抗を測定したい接地極をEとし、これと十分離れた距離に別の接地極Cを設けます。そして交流電圧Vを印加すると大地を通る閉回路ができます。ここで流れた電流Iと電圧Vから、E-C間の接地抵抗R=V/Iが得られます。
しかしE-C間の接地抵抗Rには、接地極Eの接地抵抗だけでなく、接地極Cの接地抵抗も含まれてしまいます。ここでE-C間の電圧変化をみてみると、中央に電圧の変化のない部分が現れます。
つまり、ここからEまでの電圧Vpが接地極Eの接地抵抗による電圧降下ということになります。そこでVpを測定するため、EとCの間に3番目の接地極Pを設け、電圧計を設置します。
その結果、E-P間の電圧Vpと電流Iより、接地極Eだけの接地抵抗RE=Vp/Iが求められます。

ここで接地極Pにも接地抵抗が存在しますが、電圧計の内部抵抗が大きいためP極にはほとんど電流が流れず、測定には影響しません。なおP極・C極は測定のために打ち込まれるので補助接地極と呼ばれています(P極を電位電極、C極を電流電極と言います。また、最新の規格では、P極をS極、C極をH極と表示するよう規定されているので、S(P)、H(C)と併記されている製品があります)。
なお接地抵抗の測定に交流が使用されるのは、もし直流で測定すると水を電気分解するのと同じような化学反応*が土の中の水分でも起こり、次第に電流が流れにくくなってしまうからです。(*電極に水素や酸素の泡が発生します)
また使用する交流電源の周波数は、電力系統からの誘導信号を分離しやすいように、商用以外の周波数を使用しています。ただし、あまり高い周波数を用いると、リード線のインダクタンスや容量の影響を受けるので、一般的には1kHz以下が採用されています。

7.接地抵抗計の構成

接地測定には通常補助接地極が必要なため、接地抵抗計の基本構成は①接地抵抗計、②補助接地棒2本、③測定コード3本(緑・赤・黄)となっています。このほかに④簡易測定用の測定プローブや、測定コードを巻く⑤コードリール(測定コードは10m、20mと長いため)などもあると便利です。







8.補助接地極の設置のポイント

測定したい接地極Eと補助接地極PとCはそれぞれ約5~10m間隔で一直線上に配置します。もし障害物があって一直線に配置できない場合は、E-PとE-Cに角度をつけて配置します。この場合は30度以内が目安です。
なお補助接地極P、Cの接地抵抗が大きいと測定に影響しますので、補助接地極はできるだけ湿気の多い土の部分に打ち込んでください。やむを得ず乾燥したところ、または小石の多いところや砂地に打ち込む場合は、補助接地極を打ち込んだ部分に水をかけて、十分に湿気を持たせてください。
また地面がコンクリートで補助接地極を打ち込めない場合は、コンクリート上に補助接地極を寝かせて、水をかけるか、濡れ雑巾等を補助接地極の上にかけて測定してください。
なお地面がアスファルトの場合は測定できませんのでご注意ください(アスファルトは電流を流さない絶縁物であるため)。

9.接地の測定方法

接地抵抗計を使った測定には精密測定と簡易測定があります。

A.精密測定(三極法)の方法
(1) 接地抵抗計の電池電圧を確認します。
(2) 接地抵抗計に測定プローブを接続します。
  E端子に緑、P端子に黄、C端子に赤の測定コードを接続します。
(3) 補助接地極を打ち込み配線します。
  測定したい接地体をE極とし、そこから約5~10m間隔で、ほぼ一直線上に補助接地極PとCをそれぞれ大地に
  深く埋め込みます。次に測定プローブの緑をE極に、黄をP極に、赤をC極に接続します。
(4) 地電圧をチェックします。
  レンジをEARTH VOLTAGE(地電圧測定)にします。もし電圧が表示された場合は地電圧が存在しますので、
  その電圧が3V以下(*)であることを確認してください。3V以上の場合は測定に大きな誤差を生じる可能性が
  ありますので、被測定接地体(E極)を使用している機器の電源を切るなどして、地電圧を低くしてから接地抵抗
  の測定を行ってください。
  地電圧はE極が接続されている機器やその他の機器の絶縁劣化による電流の流れ込みなどが発生原因と考えられ
  ます。
  *測定器によっては10Vまで測定可能な場合もありますので、使用される接地抵抗計の取扱説明書でご確認くだ
    さい。
(5) 接地抵抗を測定します。
  複数のΩレンジがある場合は、まず最大のΩレンジにして測定スイッチを押してください。接地抵抗値が低い場合は
  順に低いΩレンジに切り換えて測定してください。
(6) 記録します。

B.簡易測定(二極法)の方法
この方法は補助接地棒が打ち込めない場合に便利な測定方法です。既存のできるだけ小さい接地抵抗の接地極、例えば金属製埋設物、商用電源の共同アース、ビル等の避雷針などを補助接地極として利用して、二極法で測定します。
二極法では接地抵抗計のP端子とC端子を短絡します。そしてP端子側を既存の接地極に、E端子側を測定したい接地極に接続します。そのあとは、精密測定と同じように地電圧をチェックし、接地抵抗を測定します。
簡易測定の場合、測定したい接地極Eの抵抗値Rxに、P端子に接続した既存の接地極の接地抵抗値reが加算されたものが測定値Reとして表示されます。  Re(測定値)=Rx+re
ここでreがあらかじめわかっている場合は、測定値Reからreを引くとRxを求めることができます。 Rx =Re-re
もし測定目的がD種接地(100Ω以下)の基準を満たしているかどうかをチェックするだけであれば、利用する補助接地の抵抗値が不明でも、合計の測定値が100Ω以下であれば、D種接地の基準を満たしていることになるのでOKと判断できます。
一般に簡易測定は、既知のB種・C種の接地極を利用してD種接地を測定するような場合に有用です。




10.クランプ式接地抵抗計の測定原理

クランプ式の接地抵抗計は、補助接地極を打ち込む必要がなく、接地線をクランプするだけで接地抵抗が測定できるという便利な測定器です。

ただし、測定原理上、多重接地のように、複数の接地極が並列に接続されている場合でないと測定できませ
んのでご注意ください(単独接地の場合は使用できません)。
クランプ式の接地抵抗計は、抵抗を並列に接続するとその合成抵抗は小さくなるという性質を利用しています。
たとえば、1個10Ωの抵抗が並列に接続されていたとすると、
と個数が増えるほど、合成抵抗の値は1個のときの抵抗値に比べて、どんどん小さくなっていきます。
これを、例えば多重接地されている電柱の接地にあてはめてみると、
並列に接続されている接地のうち、測定対象の接地抵抗をRx、他の接地の接地抵抗をR₁、R₂、…Rnとすると、R₁、R₂、…Rnは全て並列接続されているものと考えられ、一つの合成抵抗とみなすことができます。このR₁、R₂、…Rnの合成抵抗をRsとします。Rsは複数の抵抗が並列に接続された合成抵抗なのでRxに対して十分に小さいとみなすことができます。この回路の等価回路を下図に示します。

この回路に対してトランスコア(CT1)より電圧Vを印加して、その接地抵抗に応じた電流Iを流します。
この電流は抵抗R(=Rx+Rs)と反比例の関係があり、電流を別のトランスコア(CT2)で検出して、
計算することでRを求めることができます。この際、Rが測定値として表示されますが、Rxに対してRs
は十分に小さいとみなすことができるので、表示される測定値は測定対象のRxとみなすことができます。

なお当社のクランプ式接地抵抗計4200、4202は、次のような接地が行われている場所の測定には対応していませんのでご注意ください。

  • 他の接地との接続がない単独の接地(避雷針等)
  • 本製品の交流電流レンジで2Aを超える電流が測定された接地
  • 測定対象の接地抵抗に対し他の接地抵抗が大きい接地
  • 接地抵抗が1500Ωを超える接地

11.接地抵抗計セレクションガイド

 



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